サッカーJ3の存在意義とは? Jリーグの3部は必要か? Jリーグ傘下のプロチームになるってそこまですごいことなのか?【長文】

NO IMAGE

オフィスイメージ
僕はあまりサッカーに詳しい人間ではないのだが、日本にはJリーグというサッカーリーグがあることは知っている。
そしてJ1、J2、J3というカテゴリーに分かれていて、それぞれが毎年昇格降格を繰り返しながらしのぎを削っているということも知っている。
 
ただ、その中の「J3」というカテゴリーの存在意義には以前から疑問を抱いていた。
何? J3って? 2013年に発足したらしいけど、無理に3部リーグまで作る必要あったの? 何か、J2でも財政が苦しいクラブが多いって聞くけど。そんな状況でJ3なんか作ってる余裕あるの?

2015年、J3ライセンス交付の申請をした「ヴァンラーレ八戸」が、スタジアム要件を含むライセンス基準を満たしていないとして交付を見送られている。
なおヴァンラーレ八戸がJ3ライセンス交付を見送られたのは今回で3度目となり、この決定に憤っているファンも多いとのことである。

J3の必要性について漠然とした疑問を抱いていたところにこういったニュースが聞こえてきたので、いい機会なので個人的に調べてみようと思った次第である。

「J3って何? 本当に必要なの?」

※なお、かなりの長文になりますので、コーヒーでも飲みながらのんびりとお読みください。
 
「Bリーグ(バスケット)とかいうクッソおもしろいスポーツイベント。SR渋谷vs島根を観てきたぞ。現地観戦にはこの説得力が欲しいんですよ」
 

J3への参加条件は主にこんな感じです

まずJ3への参加条件を下記に記していく。

◉J3への入会審査を受けることができるクラブ
Jリーグ百年構想クラブとして認定されていること
・JFL(日本フットボールリーグ)所属チームであること

◉主なJ3ライセンス基準
・クラブ直営、関連法人が運営する18歳以下の育成組織の保有(U-12、U-15、U-18のうち最低1つ)。もしくは当該年齢を対象としたスクールやクリニックの開催。これらの活動を継続して1年以上実施していること
・3名以上のプロ契約選手(プロA契約である必要はない※プロC契約の最高年俸は460万円)
・JFA公認S級コーチ資格取得者を監督とする
・運営法人は株式会社、公益法人(社団法人、財団法人)、NPO法人であること
・税務申告書類一式を提出し、債務超過、または3期連続の当期純損失(赤字)を計上していないこと

◉主なJ3スタジアム要件
・座席数5000人以上のホームスタジアム。安全性に問題がないとJリーグが判断すれば芝生席でも同等の扱いとみなす。ただしメインスタンドは必ず座席であること
・あらゆる箇所で1500ルクス以上の照度を確保できる照明設備があることが望ましい(将来的にJ2ライセンスの基準を満たす設備への改修、整備や移転、新設する方向であることが前提)
・原則として常緑天然芝
・ゴールは原則埋め込み式

さらにJ3への入会金が500万円、年会費が1,000万円となっており、事業収入が1.5億円以上を見込めることが条件となっている。
観客動員の条件としてJ3入会直前年度のJFLリーグ戦の1試合平均入場者が2,000以上で、かつ3,000人に到達することを目指していることとされている。

以上の「J3スタジアム要件」「J3ライセンス基準」の審査に合格し、入会審査に通ったクラブで、なおかつ

・JFL4位以内
・百年構想クラブのうち上位2クラブ

がJ3へ昇格することができる。

ヴァンラーレ八戸はスタジアム要件を満たせずに交付を見送られました

ヴァンラーレ八戸がJ3ライセンス交付を見送られた要因は、主にスタジアム要件を満たすことができなかったこと。競技成績ではJ3参加資格を満たすことができたものの、スタジアム要件がJ3の基準に満たなかったことが交付見送りの要因である。
この交付見送りに対し、現状のホームスタジアムではスタジアム要件を満たすことはできていないが、2016年完成予定の新スタジアムをホームスタジアムと見越した上で交付してほしかったというファンの声もあったという。

また最低5000人収容というスタジアム要件についても、J3の現状の観客動員にマッチしていないのではないかとの意見もあるとのことである。

確かにこのページを見ると、半数以上のクラブが参加条件である平均2000人という観客動員を下回っていることがわかる。

さらに青森県の八戸という土地柄を考えれば、毎試合2000人を集めるのは無理があるというのも納得できる。
実際、ヴァンラーレ八戸では夏休み期間中の無料招待券を配布するなど、集客面での条件を満たす努力を重ねていたようである。

そして、J3参加条件を調べていくうちに僕が最も気になったのが、

「3名以上のプロ契約選手(A契約である必要はなし)」

ここである。

運営は法人であり、サッカークラブ運営を主たる業務としていなくてはならない。事業収入が1.5億円以上で下部部チームを保有もしくは定期的にスクールを実施する必要がある。

でも所属する選手はプロでなくてもいい。
最低3人いればいい。しかも最高年俸460万円のC契約でもOK。

どういうことなのだろう。
言ってみれば外面の体裁はプロだけど、実態はアマチュアでもいい。そういうことなのだろうか?

どうだろうか。
これはJ3への参加条件が厳しすぎるのではなく、J3というリーグ自体がプロのリーグに値しないと言った方が正解なのではないのか。
つまりプロっぽさを醸し出しただけのアマチュアチーム、プロもどきでも参加できてしまうリーグがJ3というリーグであり、ヴァンラーレ八戸はその規定すら満たせないクラブだったということではないだろうか。
しかも観客動員条件を満たすために無料券を配布? そんな付け焼刃で見た目だけ強引に帳尻合わせをしてどうするというのか。
 
「ラグビープロ化構想がスタートしたらしいけど、なかなか難しそう。批判もあるけど企業スポーツってクッソ待遇いいからね」
 
非常に言いにくいのだが、わざわざこのリーグをJ3として日本のトッププロリーグの傘下に置いておく必要はあるのか。そして八戸などの地方都市が無理にプロサッカーチームを運営する必要があるのか。

ロマンを追い求める代わりに行政を圧迫するんですよねJ3のクラブって

プロっぽさを醸し出しただけのアマチュアリーグであるJ3はわざわざ日本のトップリーグ傘下に置く必要があるのか?

なぜ僕がこんな過激なことを言うかというと、J3のクラブが「県民、行政、経済界の三位一体」という理念のもと、地域の財政を著しく圧迫するからである。

たとえばだが、J3参加におけるスタジアム要件の中に、

・座席数5000人以上
・原則として常緑天然芝
・ゴールは原則埋め込み式

という規定がある。

そして、これがJ2クラブになると、

・座席数10000人以上
・常緑天然芝
・ゴールは埋め込み式

と、一気に条件が跳ね上がるのである。

さらに、J3クラブには将来的にJ2への昇格を目指すことを前提とした運営であることも求められている。

要するにJ3リーグへの参加、そして将来的にはJ2昇格を目指すクラブは、常緑天然芝完備でゴールが固定されているスタジアムを保有している必要があるということである。
これはひと言で言えば「サッカー専用のスタジアム」の保有が絶対条件ということを意味する。
つまり行政(市や県)の管轄でサッカー専用のスタジアムを建設、もしくは確保する必要があるということである。
しかもサッカー専用グラウンドなので週に2試合(月に2試合?)程度の使用以外はガラ空き状態、要するにほとんど使われることのない5000人以上収容のスタジアムが無駄に存在し続けるということである。

さすがにここまで極端なことにはなるとは言わないが、自分の収めた税金が年間ほどんど使われることのないだだっ広い地面に消えていくのである。こう考えると、サッカーに興味のない人にとっては「マジか?」という思いにならないだろうか。

ちなみに2015年にJ3に降格が決まった大分トリニータは、県から年間約1億円に相当するホームスタジアム・大分銀行ドームの使用料の全額免除されているという。J3に降格したことによって事業収入が大幅に減ることが見込まれるのに、である。

「J3降格 検証 大分トリニータ④」

また、2016年シーズンからJ2への昇格を果たした町田ゼルビアの例も見ていただきたい。

「広報まちだ」

リンク先は2013年の町田市の広報誌である。

「2012年度決算状況」内の「主要な事業と決算額」項目を見ると、2011年度に町田市が税金をどのような用途に使ったかの内訳を確認することができる。

その中で断トツに多いのが「町田ゼルビアのJ2リーグ試合に向けた町田市立陸上競技場の整備」に使った33億円である。
小中学校のエアコン設置やトイレ改修に19億円、待機児童解消の取り組みに9億円。明らかに必要と思われる支出に対し、J2リーグ参加のためのスタジアム改修費用というわけのわからんものに驚きの33億円である。

しかもご存知だろうか。町田ゼルビアはこの年J2に参戦したものの結果は最下位。J2資格を1年で失い再びJFLに降格するという破天荒っぷりを発揮しているのである。
残ったのは莫大な費用をかけて改修したスタジアムと年間数億と言われる天然芝の維持費。ただ存在しているだけで金のかかるだだっ広い地面と無駄に立派な観客席である。

ぶっちゃけどう思うだろうか。
週1、2試合(月1、2試合?)千人程度の動員数のために年間使用料を免除されたり、バカでかいスタジアム建設に税金を使われてまでJ3のチームを支援する必要性が果たしてあるのだろうか。
「我が町にプロサッカーチームを」という青臭いロマンのために貴重な税金を使われていいものだろうか。
そして、このJ3クラブに投資している企業や行政にしっかりとした見返りはあるのだろうか。

J3クラブの財務諸表を見て経営状態を想像する

というわけで、次はJ3クラブの財務諸表を見て、クラブごとの経営状態やスポンサー企業や行政にどの程度の見返りがあるのかを考えていきたいと思う。

こちらが2014年度のJ3クラブの経営情報を開示した資料である。

「2014年度(平成26年度)Jクラブ個別情報開示資料」

資料は大きく分けて「損益総括」「賃借対照」に分かれている。
まず「損益総括」の「営業収益」欄を見てみると、163百万円(1.63億円)や363百万円(3.63億円)といった景気のいい数字が並ぶ。どうやらJ3参加条件である「事業収入1.5億円以上」はどのクラブも十分に満たしているといえそうである(藤枝以外は)。

ところが、表の一番下の「当期純利益」の欄を見ると、途端に微妙な数字が並ぶ。最も黒字が多いのが長野の8百万円で、鳥取に至っては95百万円の赤字である。その他のクラブも軒並みドングリの背比べで、損益分岐点にトントンという状況であることがわかる。

ちなみにクラブの支出の大部分を占める「営業費用」の中で、最も大きな割合を占めているのが「チーム人件費」「販売費および一般管理費」である。
「チーム人件費」とは、いわゆる選手やコーチに払う給料にあたる。つまりチームの強化費用である。
そして「販売費および一般管理費」は会社を運営する上でかかる費用(社員への給与や宣伝費、家賃、通信費など)である。
この項目を見ることで、そのクラブが運営費をケチって強化費に回しているのか、それとも強化費用を出し渋るクラブなのか。そもそもお金を使わないクラブなのかといった特色が見られる。この項目はクラブごとの経営方針をかいま見ることができてなかなかおもしろい。

ただ、当たり前のことだが1年赤字を計上したからといってその会社が即倒産するということはない。
そこで、実際の経営状態を知るために次の「賃借対照」を見ていくことにする。

まずは「資産」の欄を見てみると「流動資産」「固定資産等」に分かれていることがわかる。
「流動資産」というのは「現預金」と「1年以内に現金化できる資産」を指す。つまり、その企業が「短期間のうちに動かせるお金がどれくらいあるか」を示す数値である。
そして「固定資産」というのは、企業が経営のために長期間使い続ける資産を指す。サッカークラブでいえばクラブ運営とは別にレストランや関連グッズのショップなどを経営していれば、それらが「有形固定資産」として計上されるものと思われる。

次に「負債」の欄を見ていく。
負債とは文字通り「返さなくてはならないお金」。こちらも「流動負債」「固定負債」に分かれていることがわかる。
「流動負債」とは流動資産同様、1年以内に返す必要のあるお金である。
そして「固定負債」とは返済までの期限が1年以上である負債で、一般的な企業では退職金や退職年金などに支払うお金をこれで賄う。

最後は「資本」の欄。
「資本金」「資本剰余金等」は株主(スポンサー企業)が投資してくれたお金を示し、「利益剰余金」は純利益が蓄積された金額を指す。
つまり株主が投資してくれた資本を元手にどれだけ利益を出し、どれだけ株主に配当できるかを示す金額が「利益剰余金」ということになる。当然赤字の計上を続ければ利益剰余金はマイナスとなり、株主への配当はできない。

企業の安全性を判断する3つの指標

◉中長期的な経営状態の判断基準として重要視される「自己資本率」
企業の中長期的な運営状況を図る上で重要な指標の一つとされるのが「自己資本率」である。この指標は「純資産÷資産」の式で算出される。
業種にもよるが、一般的に自己資本率の安全圏は15%前後と言われ、どんな業種でも10%を大きく下回ると危険水域と判断される。
また「資本(純資産)の部 合計」がマイナス計上される状態を「債務超過」と呼び、この状態が続くと中長期的な経営ではかなり危険であるといえる。

◉短期的な経営状態の判断基準となる「流動比率」
企業の短期的な運営状況を図る指標として「流動比率」というものがある。
企業は基本的に「流動負債が返済できなくなると倒産する」。つまり1年以内に返済しなくてはならない負債を返済できない場合に倒産する可能性が高まるわけである。
この場合、1年以内に現金化できる資産(流動資産)が流動負債をどれだけ上回っているかが重要になり、それを「流動比率」と呼ぶ。
この比率は「流動資産÷流動負債」という式で算出され、一般的に120%以上あれば当面の資金繰りに関しては問題ないと判断される。

◉最も短期的な指標「手元流動性」
「手元流動性」は資金繰りの苦しい企業にとっては最も重要な指標となる。
算出の方法は「今すぐ動かせるお金(預金+すぐに売ることのできる資産+すぐに借りられる資産)÷月商」となっており、一般的に中小企業だと1.5カ月分あれば当面は安全であるとされている。
※なお、この「手元流動性」については「流動資産」の内訳が記載されておらず、残念ながら計算することができなかった。

以上のことを踏まえて改めて賃借対照を見ていくと、各クラブの経営状況がわかってくるというわけである。

「自己資本率」に関しては秋田が-138%、鳥取が-39%となっており、中長期的に見てかなり危ない状況であることがわかる。
ただ、秋田は短期的な指標である「流動比率」については、数字は小さいながらも190%と優秀な指標を出しており、今すぐ倒産する危険性は少ないように見える。
だが、鳥取に関しては流動比率が驚きの19%となっており、かなり危機的な経営状態だと言えそうである。

その他「流動比率」が悪いクラブは主にYS横浜の79%、藤枝の50%、琉球の98%の3クラブとなっている。また相模原は比率が100%を割り込んでいないながら、112%と安全圏の120%を切っており、あまり経営状態がいいとはいえない状況であることがわかる。

さらにYS横浜に関しては自己資本率が0.025%と壊滅的な指標が出ており、抜本的な対策を考える必要がありそうである。

こうして見ていくと、J3リーグの中で経営が厳しいクラブは秋田、鳥取、藤枝、琉球、YS横浜で、特に鳥取については早急に対策を練る必要性があると判断できる。
つまり、2014年度のJ3は11チーム中約半数の5チームが厳しい経営状況であることが賃借対照から読み取れたわけである。

赤字経営をしていないだけじゃダメでしょ? スポンサーに還元しないと

さらにいうと、健全な経営と呼べる状況のクラブでも、必ずしもそれがすばらしいというわけではない。
あくまで現時点で赤字を垂れ流してはいないというだけであって、どのクラブも決して大幅な黒字を計上しているとは到底言えない。
株主に配当する「利益剰余金」を見てもわかるように、現状はスポンサー企業に対して配当が出せない状態である。

もちろん県や市が管轄するスタジアムの維持費や、スタジアム建設費用はクラブの営業費用には入っていない。それだけではなく、大分トリニータのようにスタジアム使用料を免除されているクラブすらあるほどである。

企業名を出してはいけないJリーグ規定の中、ほとんどメディアへの露出がないJ3。その宣伝効果がどの程度のものなのかはわからないが、費用対効果の面で企業や県にとってJ3のクラブを支援することにどの程度のメリットがあるのだろうか。
そういった視点で考察していくと「赤字を計上しているわけじゃないからOK」とは決してならないはずである。

しかもJ3のクラブのHPを見るとわかるのだが、たいていのクラブがボランティアを募集している。

下記のページは町田ゼルビアのボランティア募集のページだが、主な活動内容は試合会場の運営や各種イベントの運営である。

「FC町田ゼルビア ボランティアスタッフ募集要項」

はっきり言ってこれは仕事だ。
明らかに時給いくらで人を雇うレベルの仕事であって、ボランティアと称してただ働きさせていいような内容ではない。

そもそもボランティアには「人から強制されずに自由意志で行う自発的な活動」という概念がある。
組織から強い拘束を受けずに行動することが基本であるため、組織としての指示系統下には置けないということになる。

普通に考えて、こういう立場の人間にイベントの運営を任せるのはかなり危険ではないだろうか。
たとえばボランティアと観客が喧嘩をしてボランティアが怪我を負わせた場合、責任の所在はどこにあるのか。
 
「3×3 PREMIER.EXEって知ってます? 3×3(スリー・バイ・スリー)バスケットのトップリーグなんだって。めちゃくちゃおもしろそうww」
 
また、その逆も然りである。
「FC町田ゼルビア ボランティアスタッフ募集要項」を読むと「ボランティア傷害保険に加入します」との記載があるのだが、ボランティアが活動中に怪我を負った場合、果たしてどこまで保障されるものなのか。

たとえば東京都社会福祉協議会の「ボランティア保険」を見ると、一見それなりの保障はされているように思える。
だが、よく読むと「対象となるボランティア活動」は「個人の自発的な意志により他人や社会に貢献することを目的とする活動」であると記載されている。

これを踏まえた上で「FC町田ゼルビア ボランティアスタッフ募集要項」を読むと、
「組織上、株式会社ゼルビアに所属します。」
「FC町田ゼルビアの運営方針やクラブスタッフの指示に従うことを承諾していただいた方」
この記述が引っかかってくるわけである。

これはどうなのだろうか。
FC町田ゼルビアのボランティア活動は東京都社会福祉協議会の「ボランティア保険」の定める「自発的な意志による活動」の概念から外れてしまう可能性はないのだろうか。

そして何より、トラブルがあった際にクラブ側はどういった対応をするのか。
「ボランティアが勝手にやったことなので私たちは一切関係ございません」と言い放つつもりなのか。

そもそも財務諸表上は優良な指標を出している組織が、運営スタッフをボランティアに頼らなくてはならないのはプロとしてどうなのか。

考えれば考えるほどグレーな部分が多いと感じてしまう。

ここまで考えた上で最初の問いかけに戻るのだが、「我が町にプロサッカーチームを」という青臭いロマンのために、企業や行政がどこまで協力するべきなのだろうか。
とてもじゃないが、ひと言で「任せろ!! どこまでも協力してやるよ!!」などと言えるような問題ではないように思えるのだが。

※なお、財務諸表についてはこちらのページを参考にさせていただいた。
「貸借対照表から企業の安全性を分析しよう」

プロの肩書きを持つ人間はやっぱり超人であって欲しい

ここまでJ3の存在意義について長々と語ってきたが、なぜ僕がここまで疑問に思うかというと、その答えは一つである。

プロという肩書きを持つ人間は超人であってほしい。
そう願っているからである。

野球を引き合いに出して申し訳ないのだが、前回の記事でも申し上げたとおりプロ野球選手というのは本物の超人である。
オープン戦で無駄に162kmを計測する投手がいて、凡人には理解不能な理論でカーブを投げる変人がいる。しかもその超人の投げた球を打ち返す打者がいる。そういった化け物たちが棲む世界なのである。
我々凡人には到底踏み入れることができない怪物たちがしのぎを削る場所。それがプロ野球界なのだ。

「プロ野球は浮世離れしている。あのスポーツの選手はあんなに苦労しているのに」←何言ってんの?

サッカーに話を戻すと、僕はプロというのはこういう一部の選ばれた化け物のみに与えられるべき肩書きであって欲しいと思っている。

3部リーグの創設によって多くのサッカー選手にプロへの門出が開かれたことはすばらしい。
だが、逆に言うと中途半端な実力の人間でもプロを名乗れるというデメリットをも生み出してしまっているのである。

たとえばだが、現状の制度だと「学生の部活の全国大会に出場経験がある」という程度の人間がプロ選手という肩書きを得られるといったことが起こりうるのである。

何度も言うように、僕はプロという舞台は一部の選ばれた超人がしのぎを削る場所であって欲しいと思っている。
全国大会で無敵の活躍を見せた何人かの選手がプロチームからスカウトされ、数年後にそのうちの1人、2人が才能を開花させる。こうして選ばれたひと握りの怪物がびっくりするような年俸と知名度を手にする。そういう夢のある世界であって欲しいのである。
最高年俸460万円のC契約という待遇で安易にプロサッカー選手ですと言えるような今の環境に、個人的にどうも納得がいかないのである。

聞いたところによると、JリーグではC契約の選手を余剰人員として大量に獲得して欠員を補充するということが流行っているという。
しかもA契約を結び直さなければならない年数が経過する前に、経費削減のためにそれらの選手を一斉に解雇する使い捨てが横行しているという話である。
若い選手はわずかな夢に賭ける機会を得ることができ、クラブ側は安い給料で欠員を埋める人数合わせを確保できる。考えようによっては双方にとってWINWINなのかもしれない。だが、プロという肩書きを安売りしているようで、どうにも腑に落ちない。

地域密着型クラブとしてJ3を目指すのも大いに結構だが、何度も言うように僕個人としては周りの人間を蹴落として生き残った一部の超人のみが足を踏み入れられる狭き門であって欲しい。
「そこそこサッカーのうまい地元のローカルヒーロー」ごときがなれるような甘い世界であって欲しくないのである。

3年でJ2に昇格できなければ解散、3年未満でJ3に降格したら解散。そのくらいの覚悟を持って

こういったジレンマを解消する一つのアイディアとして、僕はJ3に参加するクラブには期限をつければいいのではないだろうかと思っている。

たとえばだが、

・J3リーグに参加して3年以内にJ2に昇格できなければ解散
・J2に昇格後、3年未満でJ3に降格した場合は解散

このようにある程度厳しい条件を付帯して、それなりの覚悟を持ってJリーグへの挑戦を考えるように仕向けるのである。
そうすれば「スタジアム要件は現時点で満たしてはいないが、建設中という努力を未来の成果として認めろ」などという本末転倒なクラブが出てくることを防げるのではないだろうか。

解散という崖っぷちの条件を突きつけられて、それでもなお挑戦したいという覚悟を持ったクラブだけが足を踏み入れられる場所にすることでリーグ自体にも緊張感が生まれる。
プロリーグに参戦するに値しないクラブは身の丈にあった場所へ戻っていくだろうし、ほぼ半数のクラブが財政難などという体たらくも解消できると考えるが、いかがだろうか。
さらに、3年という区切りがあれば企業も行政もスポンサーとして名乗りを挙げ易いというメリットもあるはずである。

だいぶ長文を書き連ねてきたが、僕の中でJ3というカテゴリーの存在価値の是非に対する答えはまだ出ていない。
ただ、現時点のJ3の規定が緩すぎるのは確かだと思う。

・厳しい
・もっと緩くするべき

こういった声はよく聞こえてくるが、はっきり言って逆だ。

プロを名乗りたい、プロチームを目指したいというのであればもう少し覚悟を持って参加するべきなのではないか?
行政や市民、県民の血税を使うことが前提なのだから、それなりの責任感を持って退路を断って取り組むべきではないかと思う。

※なお、なるべく正確な情報を記載するように心がけておりますが、中には誤った情報がある可能性もあります。ご了承下さい。

【個人出版支援のFrentopia オンライン書店】送料無料で絶賛営業中!!