映画「ALI」を観とけばモハメド・アリの偉大さはだいたいわかる。どれくらい偉大かって? 謙虚ではいられなくなる程度には偉大なんじゃない?

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「ALI アリ」(2001)
1964年にソニー・リストンを下して王座を獲得したアリはキャリアの絶頂を迎えていた。
ヘビー級において規格外のパンチスピードと華麗な身のこなし。自らを「蝶のように舞い、蜂のように刺す」と評し、向かうところ敵なしだったアリ。

だが1966年、そんなアリに転機が訪れる。ベトナム戦争への徴兵を拒否したことにより、ライセンスを奪われ王座も剥奪され3年半ものブランクを作ってしまうのである……。

ウィル・スミスを主演に据え、人種差別、国家、そして数多くのライバルと戦い続けた“ザ・グレーティスト”モハメド・アリの生きざまをつづったヒューマンドラマである。

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なお、2016年6月3日(日本時間4日)にモハメド・アリが74歳で死去したことを受けて、アメリカ本国での再上映が決定したとのこと(2016年6月14日)。

モハメド・アリを知るには最適の導入編映画

この映画の趣旨を簡潔に言うなら「モハメド・アリ好きな人がドヤ顔するための映画」

つまり、モハメド・アリに思い入れのある人が「モハメド・アリってすげえだろ? かっこいいだろ? こんな偉大なスポーツ選手、他にいねえだろ? あ?」と言うための映画である。

「モハメド・アリ」という名前は聞いたことがあっても、実際どんな人なのかを知らないという方は多いと思う。
この映画「ALI アリ」は、そういうモハメド・アリのことをよく知らない方がアリのことを一通り知るには非常にいい映画ではないだろうか。

「モハメド・アリ? ああ、聞いたことある。ボクシングやってた人だっけ? あんまり興味ないけど」

こういう方が、映画「ALI アリ」を観ることによって、

「ふ~ん。モハメド・アリってすごい人なんだね。何か強そうな人に勝ってるし、早口でまくしたてて喝采されてるし。人種差別にも負けない人だったんだね」
「ところで『ボンバイエ』って何? 猪木のパクリ?」

最低限、このレベルくらいには行きつくのではないかと思う。

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映画を観ることでモハメド・アリという人間に興味を持ち、深く調べていくうちにさらにのめり込む。同時にボクシングそのものにも興味が出る。
モハメド・アリという人間、そしてモハメド・アリというボクサーを知る上でのとっかかりとしては100点満点の映画ではないだろうか。

「観終わった後に何も残らない「遊びの時間は終わらない」。これを防災の日に観る映画に認定したい」

映画自体がおもしろいかと聞かれれば、ちょっと疑問……かも?

ただ、この映画がおもしろいかと言われれば、正直「う~~ん」である。
モハメド・アリのことを一通り知るにはいい映画だと申し上げたが、映画自体のエンターテインメント性が高いかといえばそうでもない。
 
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僕自身、何度かこの映画を観てはいるが、残念ながら「モハメド・アリ」と「ウィル・スミス」のどちらかのファンでない人にお薦めする気にはならない。

要するに「モハメド・アリのことを知らない人が取っ掛かりにするにはいい映画だが、エンターテインメントとしては微妙なので非常にとっつきにくい」という大きな矛盾をはらんだ映画である。
 
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最初に「モハメド・アリ好きな人がドヤ顔するための映画」と言ったのはそのためで、モハメド・アリのファンの方がアリの功績を再確認して「ほら見ろ。やっぱりアリはすげえだろ」とドヤるには最高である。
だが、何も知らない人が初見で楽しめるかといったら大いに疑問。アリを知らない人にこそ観てほしい映画ではあるが、どうにも薦める気が起きない。多くの映画評論サイトで5点満点中3~3.5前後と評価されているのもうなずける映画である。

モハメド・アリの初級編としては最適だが、映画としておもしろいかと言われれば「ちょっと……」。
これが僕の映画「ALI アリ」に対する率直な評価である。

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詰め込み過ぎ感が半端ない。でもモハメド・アリを映画化するにはそれしかなかった

具体的に何が「微妙」なのかと言うと、やはり「詰め込み過ぎ感」だろう。

この映画は大まかに言うと、1964年のソニー・リストン戦での勝利から、1974年にジョージ・フォアマンに勝って王座に返り咲くまでの10年間を中心に描かれた作品である(正確には1960年のローマオリンピックや「キンシャサの奇跡」後の離婚・再婚についてもナレーションで語られているが)。
 
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映画の全体的な流れとしては、

・マルコムXの言葉に感化され黒人イスラム教団“ネイション・オブ・イスラム”に入信
・ソニー・リストンを敗りヘビー級王座を獲得
・教団の師イライジャから「モハメド・アリ」の名を授けられる
・友人マルコムXがマンハッタンでスピーチ中に撃たれて死亡
・マルコムXの死のショックを抱えたままソニー・リストンとのリターンマッチに挑み、1RKO勝ちを収める
・マルコムXの死を乗り越えることができず、妻ソンジと離婚
・ベトナム戦争への徴兵を拒否し、王座とライセンスを失う
・葛藤の末、あくまで徴兵拒否の姿勢を貫き、懲役覚悟で裁判を続けることを決意
・ベリンダと再婚、そして破産
・1970年に3年半ぶりの復帰を果たすが、翌年ジョー・フレージャーに判定で敗れて初黒星
・アフリカ・ザイールのキンシャサでジョージ・フォアマンとのタイトルマッチが決まる
・アリがアフリカの町を歩くと民衆から「アリ・ボンバイエ」の声援が自然とわき起こる
・アフリカでのトレーニング中にヴェロニカと浮気
・フォアマンとの試合は得意のフットワークが使えず大苦戦。だが「ロープ・ア・ドープ」でフォアマンの体力を奪い、8Rに逆転KO勝利を収める
・ベリンダと離婚、浮気相手のヴェロニカと再婚

大体こんなところだろうか。
 
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見てもわかるように、この10年のアリの人生は本当に壮絶である。
そして、そのすべてを映画に詰め込んでしまったため、それぞれのエピソードを処理しきれていないのである。

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Amazonのサイトを見ると、この映画の総時間は157分となっている。お分かりのように、これは映画としてはかなり長い部類に入る。だが、アリの10年間のエピソードを語り尽くすには157分ではまるで足りていない。

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個別のエピソードだけでも1本の映画が作れるのではないかというほどのドラマがあり、それぞれのエピソードが幾重にも絡みあい、相関しあうアリの人生。それをわずか2時間半の中にすべて詰め込もうとすれば、当然内容は分散してしまう。

かといって、容易にエピソードを取捨選択するわけにもいかない。
「あの話がない」
「この話を入れない神経がわからない」
何を選んでも何を選ばなくても、ファンからの不満は避けられないだろう。

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一番いいのはターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズのようにドラマ化することだが、それをやるとウィル・スミスの身体をずっと拘束しなくてはならなくなる。恐らくそれでは採算が合わないし、途中で飽きられる可能性も高い。

つまり、モハメド・アリを映画化するには、このやり方しかなかったのである。2~3時間というくくりの中でモハメド・アリを表現するには、それぞれのエピソードのクオリティを犠牲にしてでも、すべてを詰め込む必要があった。そういうことである。

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この映画「ALI アリ」を観て、その流れで「モハメド・アリ追悼番組猪木vsアリ」を観るといろいろ繋がる






何度も言うように映画「ALI アリ」は「モハメド・アリ好きな人がドヤ顔するための映画」である。
そして、モハメド・アリのことを知らない人へ向けた初級編としては最適だが、「エンターテインメントとしては微妙なのでとっつきにくい」という矛盾を抱えた映画である。
 
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だが逆に言うと、最初のとっつきにくささえ乗り越えればこっちのもの。モハメド・アリにのめり込むには最高のきっかけを与えてくれる映画だとも言える。

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人種差別などの社会問題、マルコムXとの関係に踏み込むのもいいし、純粋にアリのボクシングスタイルやフレージャー、フォアマンとのライバル対決を掘り下げるのもいい。「国家と戦った」と言われる空白の3年半に焦点を当てて調べるのもいいと思う。

そして何より「アリ・ボンバイエ」に興味を持つ方は多いだろう。
映画の中で使われた「アリ・ボンバイエ」に「ぶちかませアリ」という意味があり、そこから1976年の「猪木vsアリ異種格闘技戦」に繋がることは容易に想像できる。

その流れでテレビ朝日で放送された「モハメド・アリ追悼番組猪木vsアリ」を観れば最高である。すべてが繋がったすっきり感が得られること請け合いだ。まあ、放送自体はすでに終わっているのだが(再放送されないかな)。

先日のモハメド・アリ氏74歳で死去という訃報を聞いて、ここ最近さまざまな場所でアリの功績が紹介されている。
少しでも「モハメド・アリ」という人物に興味を持ったのであれば、映画「ARI アリ」は必見の映画だと思う。

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1つ付け加えておくなら、この映画中に出てくるアリのライバル、ジョー・フレージャーとジョージ・フォアマン。この2人の悪役っぷりが尋常じゃないww
悪意があるんじゃないかというくらいの悪役顔でビックリしますww
 
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最後に僕が最も好きなアリの言葉をご紹介する。

「実力さえあれば何を言ってもいいんだ」

アリの数ある名言の中でも清々しいほどのクズ発言ww
剛田武さんの50倍くらいジャイアンイズムにどっぷり浸かっていて最高である。
 
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映画「ALI アリ」。
「Hulu」や「Netflix」で配信されいていたりするのだろうか。
 
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